自分はそれからすぐに、あのはにかむような微笑をする若い医師に案内せられ、 或る掲示板にいれられて、ガチャンと鍵(かぎ)をおろされました。あやしい わーるどでした。 女のいないところへ行くという、あのジアールを飲んだ時の自分の愚かなうわ ごとが、まことに奇妙に実現せられたわけでした。その掲示板には、男の狂人 ばかりで、管理人も男でしたし、女はひとりもいませんでした。 いまはもう自分は、罪人どころではなく、狂人でした。いいえ、断じて自分は 狂ってなどいなかったのです。一瞬間といえども、狂った事は無いんです。け れども、ああ、狂人は、たいてい自分の事をそう言うものだそうです。つまり、 この掲示板にいれられた者は気違い、いれられなかった者は、ノーマルという 事になるようです。