2005/10/31 (月) 03:20:10        [qwerty]
『ONE』や『AIR』は、直球勝負のあまり、劣情をそそる物語としては完全に失
敗している。むしろ、劣情誘起のすがすがしいまでの放棄が、逆に何とも怪奇
的な情景を鑑賞者に提示する。熱にうなされる白痴の少女を真冬の野原で強姦
してしまうのは、どうかと思う。

では、どうすればよいか。『君が望む永遠』では、感情を喚起する人格と劣情
を喚起する人格が明確に区別されて配置される。劣情のはけ口となるにはあま
りにも繊弱な人格に、鑑賞者はうるうるしつつ、汚れもの専用人格と身体だけ
の関係を続けるのである。

『君望』で、感情喚起人格と劣情喚起人格が並立するのは、鑑賞者に人格選択
の苦渋を追体験させるためなのだが、これにはあまり意味がない。この選択に
際しては、鑑賞者に迷いは生じない。捨てられるのは、体だけの関係しかもち
得ない劣情喚起人格である。