2012/12/26 (水) 21:02:55        [qwerty]
舞台は江戸時代、海辺の小さな村。
    痩せた土地で満足な作物は育たず、
    わずかに獲れる魚は山に阻まれ他所へ売ることもできず、
    村は絶望的に貧しく、村人は常に飢えと背中合わせの暮らしを送る。
    主な収入減は身売り。
    娘はもちろん、大人の男たちも労働力として年季奉公に出る。
    主人公の伊作は9歳。母と3人の弟妹と暮らしている。
    父は家族を養うため、3年間の年季奉公に出ている。 
    冬のある日、伊作は村長から村総出で行う「塩焼き」を手伝うよう命じられる。
    なぜか冬の時化の夜を選び、海辺で夜通し火を焚いて海水を煮詰め、塩を精製する「塩焼き」。
    実は、この作業には決して他所に洩らすことのできない秘密の目的があった。 
    それは、航路を見失った廻船を火の明かりで暗礁の多い浜に誘い込み、座礁させること。
    思惑通りに船が難破すると村人は船に乗り込んで積み荷を奪い、
    船員は口封じのために必ず全員殺してしまう。
    村人はこれを「儀式」として代々受け継ぎ、
    数年に一度の難破船を「お船様」と呼んで神の恵みのように受け止めていた。 

    伊作が塩焼きに参加した初めての冬、数年ぶりの「お船様」が到来する。
    難破船に満載されていた大量の米や、
    証拠隠滅のために船を壊して得られる木材が村を潤し、村人は喜びに湧いた。
    しかし、一息ついたのもつかの間、
    働けない老人や子どもが多い村では蓄えはあっという間に消えていき、
    一度安息を得た村人は焦り始める。 
    そんな中、次の冬に「お船様」が再び到来。
    2年続きの幸運に、村人は狂喜乱舞して船に乗り込む。
    ところが、その「お船様」はこれまでと様子が違った。
    積み荷はなく、船員は全員赤い着物、帯、足袋を身に着けて死に絶え、
    体中に赤い斑点が浮かんでいる。
    その意味するところを知らぬまま、村人は赤い衣を分け合った 
    しばらくして村人がばたばたと病に倒れ死んでいく。
    「お船様」に乗っていたのは、捨てられ流れてきた疱瘡(天然痘)患者だった。
    疱瘡神が嫌う魔除けの赤を身にまとって…。
    医者も薬もない中、祈りもむなしく村人は順番に死を待つのみ。
    伊作の母と弟妹もなすすべなく死に、伊作はわずかな生き残りとともに山へ逃れるが、
    もはや生きる糧もない。 
    最後、伊作は年季を終えて村に向かい峠を終えてくる父の姿を見つける。
    しかし、父が守ろうとした家族も帰る村もすでにどこにもない…