2013/02/22 (金) 16:08:01        [qwerty]
私は生涯に一度、殴り合いの喧嘩をした経験がある。

20歳前後の青臭い頃の話である。

「お前が気に食わねえ。喧嘩しよう」

アルバイト先で、一人の中年男から、そう言われたことがきっかけだった。

最初は、酔っぱらいの戯言でしかないと思って相手にしなかったが、その男は本気で迫って来たのである。

彼は「決闘」という言葉を使い、時間と場所を指定し、驚いたことに、「介添人」まで連れてくる入れ込みようなのだ。

それで私は、もう逃げられなくなった。

笑って相手を無視すればするほど、相手の攻撃性が増幅してきたからである。

かくて、その数時間後に「決闘」が開かれた。

忘れもしない。

場所は、東京駅丸の内南口営業所のエリアの裏の敷地にある、小石がゴロゴロしている狭隘なスポット。


東京駅丸の内駅舎
私はバイト先の上司に相談することなく、その「決闘」の場所に向かった。

すると、そこにはヤクザ風の大男の「介添人」がいて、いきなり、「始めてくれ」と言うのだ。

正直、全く相手に対する攻撃的情念を持ち得ない私は、「始めてくれ」と言われても、何もできないで、相手の尖り切った表情を目視するだけだった。

すると、相手が矢庭に、私に殴りかかってきた。

私は難なくそれをよけた。

当然である。

そこではっきりと分ったのは、相手が完璧な酔っぱらいであり、ロレツも回らなくて、その動きもあまりに鈍かったからだ。

加えて私は、中学時代から地元の近くにある、元日本チャンピオンが経営する有名なボクシングジムに、度々見学に行って、自分なりに、毎日シャドーボクシングの訓練を欠かさなかった。

ボクシングが好きだったのである。

だから、これは「決闘」にすらならないどころか、「喧嘩」にすらならないのかと嘆息した。

しかし、相手の繰り出す滅茶苦茶なパンチが私の腕を掠めたとき、私の中で、「闘争心」を掻き立てるに足る相応のスイッチが入ってしまったようだ。

その直後に起こったことについてはあまり書きたくないが、要するに、「喧嘩」にもなり得ない中年男を一方的に拳で殴り続け、しかも、倒れている相手に馬乗りになって、繰り返し殴打し続けたのである。

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