2014/10/07 (火) 21:58:49 ◆ ▼ ◇ [qwerty]しかし、試験日が近づくにつれ、私の緊張症はより深刻度を増していった。合格を目の前にしていたことが、
プレッシャーを増加させたのかもしれない。試験当日まで、過去問で準備をするべく机に向かうのだが、
勉強を始めようとした途端、肩から背中にかけて濡れた紙を貼り付けられた様な違和感が生じて、何も集中できなくなった。
当時私は精神科に通い、眠剤と、試験の時に動悸を抑える薬をもらっていた。この精神科で、新たな症状について相談したところ、
本当はのませたくないんだけど、と前置きをした上で、リタリンを処方された。
ほんの数粒だったと思う。それを飲むと、それまで私を覆っていた憂鬱感は消えていった。
粘性の高い汚泥の様につきまとっていた不安が消えていき、自分への肯定観が心に溢れてきた。
服用した私自身、このように便利な薬があるのかと驚いた。なぜもっと早くこれを処方してくれなかったのかと思わさせられた。
ただし、その効き目は、あまりにも正確だった。薬の効き目が切れる瞬間が、自分でも分かるのだ。
なめらかに動いていた体が、油の切れた機械の様に、何かぎこちなく引っかかるような重たさを含んで、動かせなくなってしまう。
心の中も同様だった。一旦分解されたはずのヘドロが、私の周囲にふたたびまとわりつき、私を黒い泥の中に沈めていった。
そして完全に切れるころには、私は、元の状態より、更に深い泥の淵をさまようことになった。