飾り気のないこのあんパンは、随分値段がこなれてきたが、おやつにするには、まだ高い。 アカツキは、そのあんパンを左手に持ったまま、シロエの方に小皿ごと残りの1個を差し出す。 「いいの?」 「奢りだ。食べて欲しい」 アカツキは言葉少なく答えた。シロエとしては、なかなかに反応に困る勧めである。 と云うのも、シロエは〈円卓会議〉の事務作業などが多くて、最近フィールドに出れていないのだ。 ミノリやトウヤ達を鍛えるためにフィールドに出ているアカツキの方が、小銭は稼いでいるという現実がある。 だから、あんパンを買ってくるアカツキの懐具合に心配があるわけではないのだが、といってシロエはギルドマスターだし、 何を言うにも年頃の男性として、小さな女の子(見た目はそうだ)に奢らせるというのは、くすぐったくて居心地が悪い。