2014/11/22 (土) 23:30:17 ◆ ▼ ◇ [qwerty]逢魔が時の波打ち際に男が一人佇んでいました
男ははるか彼方まで続く大海原を眺めていました
波は彼の前に押し寄せそして凪ぐのを繰り返していました
太陽が水平線に沈む間際にさしかかった頃です
彼は言いました
「寂しい…」
しばらく考え込んだ後右手を頭上に掲げました
その合図に従い海は真っ二つに裂けその海底を彼の前に晒しました
彼は大海原にできたその道をまっすぐに歩いて行きました
数時間ほど歩いたでしょうか
「この辺でいいだろう」
彼は左手を天に掲げました
すると天から空を一面覆うような巨大な岩が海面に目がけ落下してきたのです
岩は海へそして彼の頭上へ落ちてきます
彼に届きそうな距離まで岩が来ると掲げた左手を握りしめました
その瞬間岩は粉々に砕け散りました
砕け散った岩はバラバラになり海の四方へ落下して行きました
男はその場に座り込みました
裂けた海は元に戻りしたが彼は大海原の海底で座り込んだままでした
彼は何かに少し期待し笑っているようでした
そのまま時は悠久の時を刻んでいきました
地上には人間が生まれ文明ができ
やがて人々はこう言うようになりました
「神は死んだ」
その頃でしょうか彼はおもむろに立ち上がると
かつて歩いてきた海底の道を戻り地上にたどり着きました
海辺は彼が海原を眺めたころと比べ一変していました
彼はその場で目を閉じました
それだけですべてを把握したようでした
彼が一歩歩くと服が現れ彼はそれを纏いました
もう一歩歩くと彼の存在はその国へ認識され戸籍ができました
更にもう一歩歩くと彼を認識する人間が創造されました
彼は自分のあるべき場所へ戻っていきました
普通の会社へ務め普通の生活を送るようになりました
彼はその社会で時には泣き時には喜び時には怒り
長い年月がたち彼は自分が何者であるか忘れていきました
そして彼はある掲示板へ出会います
やがて常連になり古参と自負するまでになりました
ある秋口の日彼はこう書き込みました
わかる(;´Д`)それと生理臭な
彼は自分が何者であるか思い出したようでした