2014/12/10 (水) 19:52:54        [qwerty]
 あるときなんて、向かいの部屋の人がね、壁に両足をあげたまま、ぐたっとしてたりするわけ。早稲田か東大の学生だったかな。
「何してるんだ」ってきいたら「足がむくんでだるいから」と。ちょっと見せて見ろってんでみたら、栄養失調で脚気になってしまってんの。
 「ちょっと待ってろ」ってそいつに言って、池袋に行って、パンを買ってきてやってね。当時、三十円か五十円で結構な量の
フランスパンが買えたんですよ。そいつはそのパンを夢中でもぐもぐ食べてね、「あああ、生き返った」って。

 そしたら、そいつが言うに、「なんか困ったことがあったら、今度は俺を呼べ」ってね。腕力ではそいつ自信があったわけ。
それからなんて、用心棒付きで暮らすみたいだったよ。たとえば俺の部屋で友達が、わーっと騒ぐじゃない、するといきなり、ぐわーっと戸が開くわけね、
「なんかあったか」って。おもしろかったね、あの下宿生活というのは。