2005/12/22 (木) 13:23:49 ◆ ▼ ◇ [qwerty]帰りの電車でのこと。座席の端っこに座ってぼんやりしていると、幼女2人がそれぞれの
母親に連れられて乗り込んできた。母親は幼女2人を手すりに誘導し、自分達はその側で
おしゃべりを始めた。幼女達も幼女同士でおしゃべりを始めた。私はぼんやりしながら、
幼女達の会話を聞くともなしに聞いていた。
幼女A「……ざけんなーのせいで、いえがなくなってしまったんですって」
思わずピクリと反応した。プリキュアだ。幼女達はプリキュアごっこに興じているらしい。
いわゆる大きなお友達には「つまらん」とそっぽを向かれているとの噂を聞くプリキュア
だが、本来のターゲット層である幼女達の心は今もなお掴み続けているという事だろうか。
いろいろ思いを巡らせながら、こっそり耳をそばだてて会話の続きを聞く私。
幼女A「にほんもあめりかも、いえがなくなってしまったんですって」
ザケンナーがワールドワイドに活動してたとは知らなかった。てっきり、プリキュア達の
周囲をウロチョロしてるだけとばかり思ってた。でもアレだ、この世界から光を消すとか
何とかいう話だから、やっぱり世界をまたにかけて活動しないと成果があがらないんだろう。
ザケンナーも大変だ。
幼女A「にしとうきょうしでは、はなもなくなってしまったんですって」
幼女B「はなも? じゃあかざりは!?」
幼女A「はなもかざりも、どうろもしんごうもなくなってしまったんですって」
西東京市は集中的に蹂躙されているらしい。これは恐らく、プリキュア達が西東京市に住ん
でいる為だろう。ていうか「集中的に蹂躙」も何も、家を失う一大事の前には、花も飾りも
取るに足らないわな。道路と信号は大事だけど。あと、「花も飾りも道路も信号も」って
フレーズは詩的で素敵。森高千里の「道」を思い出した。
と、ここで幼女達の母親が、幼女達に幼稚園だか保育園の話題を振った為、プリキュアごっこ
は残念ながら一時中断。「先生が●●ちゃんの頭をぶった」とか「先生にバカって言われた」
とか訴える幼女達に、母親達が「今度先生に『頭ぶっちゃいけないんだよ!』『バカって言っ
ちゃ行けないんだよ!』って言ってやんなさい」とけしかける光景は微笑ましいのだが、私は
それよりもプリキュアの話の続きを聞きたい。そろそろ私の降りる駅も近付いてきた事だし、
早めに再開してもらえないだろうか。このままでは気になって電車を乗り過ごしてしまう。
……私の内心の願いが無事聞き届けられたのか、それほど経たずにプリキュアごっこは再開した。
しかもいきなり佳境。切羽詰まった口調の幼女。
幼女A「なぎさきいて! おねがいがあるの!」
お、初めて名前出てきた。相手になぎさと呼びかけている君がほのかだったのか。心のドス黒く
汚れた大人どもが「チンコ生えてる方」と言いならわしている方のプリキュアであるね。でも私は
チンコ生えてるのはなぎさのほうじゃないかと思うんだけど、今はそれは置いておこう。てっきり、
7割方喋ってイニシアチブを握っている君が、なぎさ担当とばかり思っていたよ。で、お願いって何だろう?
幼女A「ざけんなーをほうちょうでさして!!」
……何ぃー!? あまりの衝撃に、私思わず座席で硬直。君達はプリキュアじゃなかったのか。
プリキュアといえば、「デュアル・オーロラ・ウェイブ!!」で「プリキュア・マーブル・スクリュー!!」
じゃなかったのか。最近観てないので知識が古ぼけている可能性は高いが、少なくとも包丁等
という身も蓋も夢もない武器は使っていなかった筈である。
幼女B「さしてきたわ!!」
刺したー!!! なぎさ仕事激早!!! つーか、ザケンナーに包丁って効いたんだ……。
笑い出しそうなのを必死に堪える。今ここで笑ったら、今まで盗み聞きしてたのが幼女達と母親達にバレてしまう。
幼女A「あなたたちのかつやくのおかげで、まちにいえがもどったわ」
第三者ぶったまとめ出た!!!!! もしかしてこれで大団円!? ザケンナーを包丁で刺して
ハッピーエンド!?!? 何気に起承転結もバッチリ押さえて、ちっちゃいのに凄いストーリーテラーですよ!!
ここで、これ以上ない良いタイミングで、電車は私の降りる駅に到着した。微かに肩を震わせつつ、
できるだけ何食わぬ顔を取り繕って電車を降り家に帰った後、棚ボタで仕入れたこの愉快な物語を
反芻して繰り返し楽しむ為に、私はこの文章を書いたのであった。