2006/01/11 (水) 01:27:41 ◆ ▼ ◇ [qwerty]1.業界の現状
とんかつ屋が大変な公害産業だと言うと驚かれる方が多いでしょう。しかし、
一般の店では大量の廃油が出ます。恐らく通常程度の規模の店で1日に1斗かん
2本から3本は使いましょう。廃油引取業者というのがおり、これを回収して、
石けん・ゴム等にリサイクルしております。かっては業者が買い取っていたわ
けですが、現在では円高のため、店の方が1かん当り300~500円程度で引き取
ってもらっているというのが現状です。当然引取業者に出すのはむしろ良心的
なわけで、下水に捨てるならまだしも、川等に夜中に捨てに行く者もかなりい
るでしょう。当店が真に驚くのは引取業に新規参入するには土地代を除いて、
プラントだけでざっと50億円かかるという点です。とても市民運動のリサイク
ルでできるものではありません。当店を除くとんかつ屋は良心的なところでさ
え、それだけの社会的コストを経済全体に強いているのです。
当店はそのような業者の存在そのものを最近まで知らず、つきあった事もあ
りません。そもそも当店では廃油が全くでません。しかしながら、そもそも不
要とまでは申しませんが、本来の市場規模は現在の10分の1程度の筈の引取業
界(公益法人たる全国、地方団体まであり、各理事等は官庁からの有力な天下
り先でもあるといいます)をここまでムダに発展させ、本来5分の1程度の消費
量で済む食用油業界をも今日まで不必要に拡大させ、ために資源配分のゆがみ
や、地球環境に甚大な損害を与えてきた責任の小さくない部分は創業以来70年
にわたり、極端な秘密主義をとり、自己の利益の拡大のみを企ってきた当店の
創業以来の経営姿勢にあると考える次第であります。当時としては経済は拡大
こそ善であり、地球環境への考慮も問題でなく、当店も他店との競争こそ第一
でありましたでしょう。その結果として今日の業容を見るとはいえ、企業の社
会的責任に思いをいたすとき、現状に到底甘んじ得ず、社会への提言といたす
ものであります。
ちなみに当店の油使用量は同業者の数百分の1、通常の店が1日3かん使うと
12,000円程になります。これは一番安い業務用冷凍肉で換算しますと1センチ
厚さとして160人分になります。一般には肉より油の方が高くついているのです。
当店の低価格の秘密はここにあるわけで、もちろん当店のメソッドを他店にお
いても採用されるならば経営的にも大変なメリットとなります。
2.「とんかつ」とは
一般の料理書等ではとんかつとは天ぷらからの応用としているものが多く、調
理法としても当店及び1、2の店を除けばそのようになっています。そこで天ぷ
らとの対比をいたす事が説明に好都合となります。
そもそもとんかつと天ぷらは「なぜ揚げるのか」において180度目的が異なっ
ております。この点での混同こそ同業他店の全ての悲喜劇の原因といえましょう。
天ぷらの場合、材料は主に魚貝類です。問題は素材の有する水分にあります。魚
貝類ではこれは旨味のを濃縮するため、油で揚げるのです。脱水作業をしている
のです。
とんかつの場合、材料の肉に含まれている水分は「肉のジュース」とも言われ
るように旨味そのものなのです。そこでこの水分を少しでも失なうことのないよ
う揚げねばなりません。一般店ではとんかつを油に入れますとジューと激しい音
がして、あぶくがわきます。これは水分が皆油の中に出ていっているわけで、代
わりに油が肉の中にしみて行きます。ひたすらコストをかけて肉をわざわざ油く
さくするのみで、廃油公害をまきちらせ、旨味を全て油の中に捨てているわけで
す。
発生史的にとんかつには2種類あり、大衆向にとにかく安く、油まみれでカロ
リーだけは不自然に高くという方法があり、今日当店を除き、おおむねこのやり
方だけが広まってしまいました。今日でも若い世代向に、カロリーだけとれれば
良いというなら存在意義はありましょう。1回食べれば丸1日は何も食べたくなく
なるほどでしょうから。
担し、高温でジューというやり方をいかに公害を大量発生させるとはいえ、調
理法として全面的に否定はしません。油を新鮮に保ち、厚さ8ミリ以下なら、その
方が良いでしょう。しかし理論上、油は180度で25分使うと劣化します。変に良心
的な店で25分ごとに油を捨てたりしたら、それこそ公害となるわけで、大衆向の
店が理屈もわからず高級化しようとするので困るわけです。