2006/02/03 (金) 18:02:04 ◆ ▼ ◇ [qwerty]『…ぁ…もっと…』
あつい塊が十夜の中で激しく蠢く…。
多分こんな快楽を与えてくれるのはこいつだけだろう…。
羞恥を感じながらベッドサイドに脱ぎ捨てたネクタイを男の首に巻き付ける。
『拓…僕を裏切らないでね…。裏切ったら殺すよ…』
妖艶な笑みを浮かべ、十夜は男の首に巻き付けたネクタイをひっぱる手を強めた。
『……くっ』
苦痛に顔を歪め、男は微笑した。
『おまえに殺されるなら本望だ…』
そして、ついばむだけのキスを何度も繰り返す。
いつからだろう…。
こいつとこんな関係になったのは…。
虚ろな表情のまま、首筋に顔を埋めてきた相手に身を任せながら、十夜はゆっくりと過去をたどった──。
深夜
眠らない都会の高層マンションの一角に、高貴な美貌をもつ赤城十夜は一人で住んでいる。
都内の大手広告代理店の入社一年目にして皆の期待や羨望を浴びている彼であるが、今日はある理由で苛立っていた…。
数日前、他の社から移動になってきた植木正也という同年代の社員が今日、自分を抜いて営業成績のトップに躍り出たのだ…。
社のみんなにはやし立てられている植木を見ていると、無性に惨めな気持ちになってくる。
そんな自分にも嫌気が指すが、プライドの塊で生きているような十夜は悔しさを抑える事が出来なかった。
それに、十夜は植木が苦手だった。
転属されてきてから、この男とは馬が合わない。
何をするのにもそつがなく、みんなに慕われている植木を見ていると、自分の存在がちっぽけな様に思えてくる。
だが、そんな事を知られる訳にもいかず、帰り際、
『おめでとう、君の活躍に期待しているよ。』
と、なるべく明るい表情を作って告げた。
だが、次に彼の口から出された言葉は──。
『そんなに私に負けて悔しいんですか?逆恨みはやめてくださいね。どんなにあがこうと貴方は私には勝てないのですから…』
と半ばからかうように言って来たのだ…。
普段は取り乱す事のない十夜も頭に血がのぼり、思わず手を挙げていた…。
『───!!』
社内に渇いた音が響いて、辺りが騒がしくなるが、十夜は振り向きもせずにひたすら歩いてロビーを抜け、自宅へと帰っていった。
マンションの入口を見ると、知った顔があった…。
『ぁ…あれは……!』