南泉の弟子たちが、一匹の猫をはさんで 「これはわれわれの猫だ」「いや、こちらの猫だ」と言い争っていた。 そこへ現れた南泉和尚は、猫の首をつかむと、それを突き出していった。 「いまこのときに、仏の道にかなう言葉を発すれば猫は斬らない。さもなければ、この猫は斬って捨てる。さあ、どうだ!」 だが、だれも答えられる者はなかったので、猫を切り捨ててしまった。 夕刻になり高弟の趙州が帰ってくると、お前ならどう答えたかと迫った。 すると趙州は、履いていた草履を頭に乗せ、すーっと部屋を出ていった。 「ああ、お前がいたならば、ワシも猫を斬らずにすんだのに・・・」 南泉は、そういって非常に残念がった。