2006/03/21 (火) 00:18:16        [qwerty]
日本対キューバ。9回裏0-1。日本の攻撃。 
2アウトながらイチローが出塁する。 
ここで日本ベンチが動く。代打か?誰を?
場内アナウンスに我々は耳を疑った。 
「代打、王貞治」 
バッターボックスに無言で立つ王。
あの頃の記憶と寸分違わない姿の1本足。
さながら鶴の様な姿だが眼光は猛禽類を彷彿とさせる。
キューバの投手の1投目。ど真中のストレート。
生ける伝説との対決に、彼には逃げる気など毛頭ない。 
王は微動だにせず見送った。 
2投目。ストレート。154km。場内がどよめく。王は動かない。 
投手が3投目のモーションに入る。
場内が静まり返る。
アナウンサーももはや一言も発さない。 
世界が静寂に包まれる。 
キューバの投手が投げると同時に晴天の大空に白球が吸い込まれた。
場外ホームラン。 
王がゆっくりとダイヤモンドを周る。一歩一歩確かめる様に。 
先にホームにたどり着いたイチローは堪らずその場泣き崩れる。
声にならぬ声で王の名を叫び続ける。 
日本代表ナイン達もホームにて王を待ち構える。
皆、整列し直立不動である。その瞳からはとめどなく涙が溢れている。
ホームに帰還した王が出迎えたナイン達を見渡し、ようやく一言発する。

『勝ったな』 

豹頭王の花嫁 ~完~