しかしいったん東京ビッグサイトにつくと、おれは昂揚と幸福感にとらえられ、 至福の満ちおこる汐におし流された。おれはあらためて、朝の始発組行列から、夕 暮の閉幕コールに拍手する眼も昏む快楽の一瞬まで、おれの萌えオタクとしての生 活が嫁によってつねに償なわれ満たされ光輝をそえられているのだと感じた。おれ が現実生活のなかでどんな寂蓼感をもつときがあろうと、二次元キャラの夫として のおれには至福の瞬間の連続しか真実ではないのだから、その灰色の世界こそ欺瞞 なのだ。二次元に関係のないことを考える必要はないばかりか、嫁の眼、嫁の耳に おいて世界をとらえるほかのことをおれはすべきでない、それは私心なのだから、 おれは私心なき忠に徹しなければならない!