2006/04/01 (土) 01:33:00        [qwerty]
速水町は昔、「速水村」という村だった。
その名の通り、村のそばには田辺川という流れの急な川があり、田んぼに水を引いても、
水が冷たすぎてなかなか作物が育たなかった。

ある年、たいそうな飢饉になってしまい速水村でもばたばたと人が死んでいった。当時の
村長は村を心配して峠を越えた先にある「柘植村」に食べ物を分けてもらいに行った。
底意地の悪い柘植村の村長にさんざん頭を下げ、やっとの思いで一握りの豆を分けてもらった
ところが村長は、帰り際に田辺川を渡ろうとして、急流に脚をとられて流されてしまった。
しかし、村長はみんなの命がかかった豆を必死に守りぬき、やっとの思いで村にたどり着いた。

おなかをすかせたみんなの前で村長が頭陀袋を開けてみると…なんと、そこには豆ではなく、
豆くらいの大きさの小石ばかりが入っていた。

「おのれ、柘植村め」

村長は怒りのあまりに目が釣りあがり、髪が逆立ち、ついにはハクサンシーの姿となって一目散に空を飛んだ。
柘植村の上まで飛んだハクサンシーは、柘植村の一番高い場所にある大きな柘植の木に雷を落とした。
柘植の木は真っ二つに割れて片方は柘植村の村長の家を直撃し、一家はみな下敷きになって死んでしまった。
もう片方は村の畑を転がり落ち、畑の作物は次々と焼けて灰になっていった。

ハクサンシーの祟りを恐れた柘植村の人々は、白龍神社を建ててハクサンシーを祭り、
以後毎年白龍祭のときには袋いっぱいの豆を備えてハクサンシーをなだめるという話である。