2006/04/18 (火) 18:23:28        [qwerty]
小説書いた

 ふと気がつくと、俺はガラス張りの水槽の中に入れられていた。
 周りを見回そうと首を左右に振ろうとすると、視界がわずかに揺らぐ。
首を振ろうとして胴体までよじってしまったので、水槽に張られた少し濁った水が揺れたのだ。
 そんな俺の動きに、反応して動いた個体があった。そいつは、水槽の外にいて俺より大きな身体を持っていた。
その個体は、傍らにいたもう一つの個体に何やら喋りかけている。しかし、そんなことは俺にとってはどうでもいいことだ。 
 それにしても、なぜ俺の首は回らないのだ? 
なんとか首を回そうと多少の努力をしてみたが、そうするとなぜか身体全体までもが向きを変えてしまう。
狭い水槽の中でかなりのオーバーアクションをしてしまったために、水槽の底に沈んでいた埃が舞い上がって、視界が悪くなってしまった。
上方では、水面が波を打っている。
 落ち着け。なぜだ。なぜこんなことになっているのだ。落ち着くんだ。そうだ。こんなときには深呼吸だ。
俺は息を深く吸い込もうと、えらを大きく開いた。 

 えら? えらだと。なぜ俺は、ここでえらなどという単語を思い浮かべたのだ。深呼吸をするなら、普通は口から空気を吸うべきではないのか? 
いや、違う。そもそも空気などどこにあるというのだ。
俺の周りにあるのは、ついさっき俺が濁してしまった水槽の水だ。そして空気は、水面の向こう側と、ガラスの向こう側にあるのだ。どういうわけだ。
俺は、空気を吸わなくてもいいのか。苦しくはない。えらで呼吸をしているからだ。 

 なぜ俺にえらなどというものがついているのだ。俺はついに魚になってしまったのか。
首が回らなかったのは、実は首などという部位は俺という生き物には存在せず、頭部と胴体がダイレクトに繋がってしまっているからなのか。

 俺が魚。俺が魚に! ああ、なんということだ、俺が魚に!