2005/04/25 (月) 13:37:21        [qwerty]
いつもと変わらぬ朝を迎え 
いつもと変わらぬ満員電車に乗った 
いつもと変わらぬ車輌の中では 
いつもと変わらぬ顔同士が他人の振りをしている 
いつもと変わらぬ停車駅では 
いつもと変わらぬ乗客が乗り込み 
いつもと変わらぬ新聞を広げては 
いつもと変わらぬ同じ記事を読んでいる 
しかし 
いつもと変わらぬはずの列車は 
いつもとは違うスピードで飛ばし 
いつもと変わらぬ筈の冷静な運転手は既に発狂していた 

時速120キロメートルのスピードで列車は線路を踏み外し 
激しく横転しながら何本もの電柱をなぎ倒した 
夥しい数の乗客が発した悲鳴は激しく天国への扉をノックした 

「見よ、前代未聞の慘劇を!」 

粉々に砕け散った窓硝子の破片が乗客の身躰に突き刺さって 
真っ赤な生暖かいエナジーがどくどくと噴き出している 
激しい衝撃に飛び出た中年男の目玉は驚いたような表情で私に何か言おうとしている 
思わず目を背ければそこには千切れた無数の手足がまるで生き物のように妖しく蠢いていた 
サラリーマンの口元からは朝食と思われるコーヒーとハムエッグと胃液のミックスジュースがこぼれ 
OLの足下からはあまりのショックによる失禁と生理中の血でブレンドされたオレンジジュースがこぼれている 
その美しい光景はマルセル・デュシャンの芸術論を軽く越えてしまった 
なぜなら『ローズセラヴィ』も『フレッシュ・ウィドー』も『アンフラマンス』も既に語り尽くされているではないか! 

記憶というのは恐ろしくも悲しい程に 
時が経てば経つ程に鮮やかに 
そして鮮明に