2006/05/14 (日) 11:02:13 ◆ ▼ ◇ [qwerty]「近年は経済の停滞とともにナショナリズムが台頭した」と言わ
れることがあります。しかしその形容は少し単純だと思います。
たとえば80年代以前に、ナショナリズムがなかったとは思いませ
ん。
70~80年代には「日本的経営は優れている」とか「日本人は勤
勉な民族だ」といった「日本人論」がたくさん書店に並んでいま
した。あれはあの時代のナショナリズムの表現形態だったと思いま
す。
90年代以降は経済が停滞し、そういう表現が成り立たなくなっ
て、歴史認識や靖国問題などに焦点が移った。つまり、経済が停滞
したことで「ナショナリズムが台頭した」というより、「ナショナ
リズムの表現形態が変わった」とみなすほうが適切でしょう。
とはいえ近年の社会変動の影響で、日本のナショナリズムの質的
変化も起きていると思います。
政治学者の丸山真男は、敗戦直後の論文で、以下のように述べていました。
戦前日本の超国家主義は、農村や小工場など中間共同体のボスが支持層
となり、中間共同体の構成員をひっぱっていった。
それは、中間共同体が壊れた大衆社会で人びとが原子化した個人に
なり、価値観のよりどころを求めてナチスを支持していったような
形態とは異なるというわけです。
日本ではその後に高度経済成長が起きますが、企業や労組、商工
会といった中間共同体は生きていた。「日本型経営」をたたえた80
年代の経済ナショナリズムも、その延長にあったと思います。
この社会構造を壊したのが、90年代の不況だった。企業一家主義
や終身雇用は時代遅れとされ、地方の商工会もさびれた。それまで
中間共同体に頼っていた人びとに孤立感が広がる。そこで、日本に
も大衆社会型のナショナリズムが成立する基盤ができてきた。