> 2006/05/17 (水) 16:30:16 ◆ ▼ ◇ [qwerty]> > 最近仕事中にヒマなので400字作文を書いているよ
> アプ
――「いただきます」
二人だけの食卓。白、黄、そして赤。
姉はいつだって、卵料理しか作らない。
生卵を机の角に打ちつける。入った皹に親指を立てる。
「!」
姉の足指が、僕を弄る。
知らずと、親指が、深々と殻に差し入れられる。黄身が流れ出している。
腰を引いても、膝を閉じても、姉の指はついてくる。
全身の皮膚が、開いた傷口みたいに敏感で、熱を持つ。
呼吸が浅く、早くなる。
うつむきながら、上目遣いで姉を窺う。
薄い唇の間で、白い八重歯と銀色のブリッジが光っている。
桃色の舌が、ケチャップを舐めとっている。
視線を上げられない。
目を見たら、どうなってしまうか判らない。
姉の足が、湿気を帯びている。
椅子の軋む音が、遠くに聞こえる。
頭の芯が、白く痺れる。
その白が頭中に広がって、何も考えられなくなる。
意識が、途切れる。力が、入らない。
――暗転。
机に突っ伏し、頬にぬめりを感じながら、僕は思う。
「白身って、生臭い……」
参考:2006/05/17(水)16時29分17秒