> 2006/05/17 (水) 16:41:55 ◆ ▼ ◇ [qwerty]> > アプ
> ――「いただきます」
> 二人だけの食卓。白、黄、そして赤。
> 姉はいつだって、卵料理しか作らない。
> 生卵を机の角に打ちつける。入った皹に親指を立てる。
> 「!」
> 姉の足指が、僕を弄る。
> 知らずと、親指が、深々と殻に差し入れられる。黄身が流れ出している。
> 腰を引いても、膝を閉じても、姉の指はついてくる。
> 全身の皮膚が、開いた傷口みたいに敏感で、熱を持つ。
> 呼吸が浅く、早くなる。
> うつむきながら、上目遣いで姉を窺う。
> 薄い唇の間で、白い八重歯と銀色のブリッジが光っている。
> 桃色の舌が、ケチャップを舐めとっている。
> 視線を上げられない。
> 目を見たら、どうなってしまうか判らない。
> 姉の足が、湿気を帯びている。
> 椅子の軋む音が、遠くに聞こえる。
> 頭の芯が、白く痺れる。
> その白が頭中に広がって、何も考えられなくなる。
> 意識が、途切れる。力が、入らない。
> ――暗転。
> 机に突っ伏し、頬にぬめりを感じながら、僕は思う。
> 「白身って、生臭い……」
いいんじゃない?
参考:2006/05/17(水)16時30分16秒