2006/06/12 (月) 01:51:07        [qwerty]
「おにいさんこんな所でなにしてんの?」
「おにいさん……まあ確かにそのぐらいの年齢差はあるか」
「おじさんって言われるよりはいいでしょ」
「多分そこまでの年齢差は無いと思うがな」
「なにしに来たの? あたしとお話?」
「爆弾解体だ」
「………」「………」
「奇特なひともいるもんですね」
「おれもそう思う」
「………」
「君はなにしてる」
「くすくす」
「………」「………」
「どうした? なにか変な事言ったか」
「ふふ、君だって」
「じゃあどう言えっていうんだ」
「ミライ」「ミライ?」
「ミライ」「ミライ……」
「繰り返さなくていいわよ」
「ならそっちも2度言わなくていい」
「疑問系で言われたから」
「名前かそれ」
「そうよ。他になにがあるの」
「時の経過を表現する形式で動詞の時制のひとつで、時間を表す状態語」
「国語辞典みたいな返答ね」
「そんなに嫌いじゃなかったしな。時々自然に出る」
「何が?」
「国語辞典」
「国語辞典が嫌いじゃない人なんているの?」
「ここにいる」
「なにがいいの?」
「暇つぶしには悪くないな」
「退屈を悪化させるだけだと思うけど」
「そうでもないぞ。誤字を見つけて出版社に知らせると図書券が貰える」
「誤字かどうかどうやって判断するのよ」
「別の国語辞典かな」
「……ならその図書券で何を買うの?」
「新しい国語辞典」
「………」「………」
「変な人」
「よく言われるな」
「………」「………」
「ねえ」
「?」
「もっとお話してよ。いい暇つぶしになるわ」
「悪いがおれは君の……」
「ちょっと待った」
「は?」
「だからミライ」「ミライ?」
「そ、ミライ」「……名前か?」
「他に何があるのよ」
「時間を表す未来形」
「こんな時に時間軸の話してもしょうがないでしょ」
「ある意味うってつけの空間のような気がするんだがな」
「………」「………」「………」
「で、なんの話だっけ……」
「………」「………」
「そうそう、だから君の……」
「だから」
「?」
「ミライ」「ミライ?」
「そうそう」「???」
「それでいいわ」
「何がいいのか全然分からんのだが」
「あたし、君って呼ばれるの嫌い」
「………」「………」
「……ミライの暇つぶしの為に来た訳じゃない」
「じゃあなんの為に来たの?」
「爆弾解体」
「奇特な人もいるもんですね」
「おれもそう思う」
「………」「………」
「名前は?」
「名前?」
「そう。おにいさんの」
「ノゾミ」「ノゾミ?」
「ノゾミ」「ノゾミ……」
「何度も繰り返さなくていい」
「だって名前かどうかよくわからなかったから」
「他になにがある」
「一番はやい新幹線」
「………」
「もしくはキボウを連用形で使いたい時の別称かな。あはは」
「そんな説明国語辞典には載ってない」
「辞書に載っているかどうかが全てのガリ勉青年みたいな台詞」
「そこまで融通が効かないつもりも無いが」
「……でなんの話だったかしら」
「爆弾解体」
「そうそう。で、それはお仕事? それとも趣味」
「爆弾解体が趣味の欄に書かれている履歴書は見た事が無いな」
「履歴書には書かない趣味なんていくらでもあるでしょ」
「たとえば?」
「んー」
「………」
「爆弾解体とか」