2006/06/29 (木) 20:28:21 ◆ ▼ ◇ [qwerty] 一つ、わしの思い出を話そう。結婚したばかりの頃だ。生活は苦しく、す
べてが悪くなるばかりだ。わしは疲れ果て、死んだら楽になると思った。も
う限界だとね。ある朝暗いうちに、車にロープを積んで家を出た。わしは固
く決意してた、自殺しようと。1960年のことで当時はミネアに住んでい
た。わしは家の側の果樹園に入っていった。1本の桑の木があった。まだあ
たりは真っ暗でね。ロープを投げたが枝に掛からない。1度投げてだめ、2
度投げてもだめ。とうとう木に登ってロープを枝に結んだ。すると手に何か
柔らかいものが触れた。熟れた桑の実だった。一つ食べた。甘かった……。
二つ食べ、三つ食べ……、いつの間にか夜が明け、山の向こうに日が昇って
きた。美しい太陽!美しい風景!美しい緑!学校へ行く子供たちの声が聞こ
えてきた。子供たちが木を揺すれと。わしは木を揺すった。皆、落ちた実を
食べた。わしは嬉しくなった。それで、桑の実を摘んで家に持って帰った。
妻はまだ眠っていた。妻も起きてから桑の実を食べた。美味しいと言って
ね。わしは死を置き忘れて桑の実を持って帰った。桑の実に命を救われた。
桑の実に命を救われた。
あんたはトルコ人じゃないから一つ笑い話をしよう。怒らないで……。ト
ルコ人が医者に行って訴えた。“先生、指で体を触るとあらゆる所が痛い、
頭を触ると頭が痛い、足を触ると足が痛い、腹も痛い、手も痛い、どこもか
しこも痛い。”医者は男を診察してこう言った。“体はなんともない、た
だ、指が折れている。”と。あんたの体はなんともない、ただ考えが病気な
だけだ。わしも自殺しに行ったが、桑の実に命を救われた。ほんの小さな桑
の実に。あんたの目がみてる世界は本当の世界と違う。見方を変えれば世界
が変わる、幸せな目で見れば、幸せな世界が見えるよ。
すべてを拒み、すべてを諦めてしまうのか?
桜桃の味を忘れてしまうのか? ……