2006/08/20 (日) 22:45:49        [qwerty]
近付くにつれ、そいつは「あの男」だと判った。後姿だけしか見ていないが、薄い水色の 
シャツにジーパン、ボサボサの髪をした、あの男。どうやら携帯を握っている。電話の男も 
この男だった!私は何が起こっているのか判らないまま、お互いが無言の携帯を握ったまま 
後ろ歩きの男の背を見つめていた。しばらくして、その男の動きがいきなり早くなった。 
まるで早送りしているような動きで急速にこちらに向かって来た。 
もう急激な恐怖のピークで、携帯を落としてその場で尻餅をついて、ぎゅっと目を瞑る 
事しか出来なかった。 

…いつの間にか気絶?眠ってしまっていた? 
気が付いたら自分の家のベッドで目を覚ましていた。何か酷く気分の悪い夢を見たな…と 
思って、時間を確認しようと携帯を見た。すると、携帯の時刻は10時8分を指していた。 
「ぎゃあああ遅刻だ!!」大慌てで仕事場へ急行。その時、やはりあれは夢だったのだろう、 
と気付いた。車通りも人もいつも通りそれなりにいた。勿論職員通用口には警備員も受付も 
いつも通りにいた。 

私は大慌てで街頭販売用セットの所に向かった。既にセットは出されていて、そこには 
店長が私の代わりに販売を行っていた。私は平謝りに平謝りを重ねた。店長は初老で 
温厚な人だったから「いいよいいよ」と笑って許してくれたが、私はどうしようもなく 
申し訳ない気持ちでずっと下を向いていた。そしてあるものを見つけた。