2006/08/20 (日) 22:49:36        [qwerty]
日のある内に下山しようと、強引に藪漕ぎしていた時のことだ。 
どこからともなく、トランペットの音が聞こえてきた。他の楽器も鳴っている。 
ははぁ、さては下った所に学校があるな。 
夕焼け空に微かに響く、ちょっと下手くそな楽器の音を聞いていると、とにかく 
無性に郷愁を覚えた。懐かしい。足を早めて斜面を下る。 

段々と音が近くなってくる。そろそろ藪も抜けられるかな。 
そんなことを考えていると、いきなりペットの音がプツッと消えた。 
吹くのを止めたという感じではなく、強引に打ち切られたような印象だった。 
その後、すぐに開けた場所に出た。 

彼が対面したのは、既に廃校になった小さな中学校だった。 
破れ放題の校舎には、当然ながら誰の姿も見えない。 
呆然と見上げる彼の耳に、カァカァと烏の鳴き声だけが聞こえていた。