日のある内に下山しようと、強引に藪漕ぎしていた時のことだ。 どこからともなく、トランペットの音が聞こえてきた。他の楽器も鳴っている。 ははぁ、さては下った所に学校があるな。 夕焼け空に微かに響く、ちょっと下手くそな楽器の音を聞いていると、とにかく 無性に郷愁を覚えた。懐かしい。足を早めて斜面を下る。 段々と音が近くなってくる。そろそろ藪も抜けられるかな。 そんなことを考えていると、いきなりペットの音がプツッと消えた。 吹くのを止めたという感じではなく、強引に打ち切られたような印象だった。 その後、すぐに開けた場所に出た。 彼が対面したのは、既に廃校になった小さな中学校だった。 破れ放題の校舎には、当然ながら誰の姿も見えない。 呆然と見上げる彼の耳に、カァカァと烏の鳴き声だけが聞こえていた。