2006/08/20 (日) 22:51:00        [qwerty]
 そして、ある日ふっと居なくなったんだ。 
 じぃちゃんもみんなと色々と探したんだよ。 
 そしたら… 
 山の中の高い木のふもとで、友達は死んでた。 
 木の幹には足掛けに削った後がてんてんと付いていてね。 
 友達は自分で木に上って、足を滑らせて落ちたんだ。ばかなやつだよ。 
  
 坊、世の中には人が入ってはいけない場所っていうのがあるんだ。 
 それは怖い場所だ。 
 坊だったらタンスの上もその場所だよ。 
 落ちるのは怖いだろ。そういうことだよ。 
 じぃちゃんの友達には、怖い場所が見分けられなかったんだ。 

怖いね。ばちがあたったのかな。 

 いいや、怖いのはここからさ。 
 友達が死んでから、村の中のひとたちが次々に「天狗を見た」って言い出したんだ。 
 じぃちゃんは「あれは友達のでまかせだ」と言ったんだけどね。 
 友達が天狗の怒りに触れた、祟りだ、呪いだ、と皆は自分達でどんどん不安をあおっていった。 
 夜通しで見張りの火まで焚いたんだ。 
 皆が顔をあわせるたびに天狗の話をするので、村の中がじめじめしていた。