河上彦斎というのは幕末の暗殺常習者のなかでもめずらしく教養のあるほうだったが、 しかし無口な男で議論が得意でない。仲間のあつまりに出席しても、すみでだまって 一座の議論をきいている。やがて一座のたれかが、「ちかごろ、たれそれは幕府のたれか と通じているのではないか」というと、河上はすっと立ちあがる。一座のたれも気づかない。 やがて座にもどってきたときは、その話題の人物の首をさげている、 といったぐあいの男だったらしい。