「いけないわ、毎日、お昼から、酔っていらっしゃる」 バアの向いの、小さい煙草屋の十七、八の娘でした。 ヨシちゃんと言い、色の白い、八重歯のある子でした。 自分が、煙草を買いに行くたびに、笑って忠告するのでした。 「なぜ、いけないんだ。どうして悪いんだ。 あるだけの酒をのんで、人の子よ、憎悪を消せ消せ消せ、ってね、むかしペルシャのね、 まあよそう、悲しみ疲れたるハートに希望を持ち来すは、ただ微醺をもたらす玉杯なれ、ってね。 わかるかい」 「わからない」 「この野郎。キスしてやるぞ」 「してよ」 ちっとも悪びれず下唇を突き出すのです。 「馬鹿野郎。貞操観念、……」 しかし、ヨシちゃんの表情には、あきらかに誰にも汚されていない処女のにおいがしていました。