2005/05/09 (月) 00:23:22        [qwerty]
「いけないわ、毎日、お昼から、酔っていらっしゃる」
 バアの向いの、小さい煙草屋の十七、八の娘でした。
ヨシちゃんと言い、色の白い、八重歯のある子でした。
自分が、煙草を買いに行くたびに、笑って忠告するのでした。
「なぜ、いけないんだ。どうして悪いんだ。
あるだけの酒をのんで、人の子よ、憎悪を消せ消せ消せ、ってね、むかしペルシャのね、
まあよそう、悲しみ疲れたるハートに希望を持ち来すは、ただ微醺をもたらす玉杯なれ、ってね。
わかるかい」
「わからない」
「この野郎。キスしてやるぞ」
「してよ」
 ちっとも悪びれず下唇を突き出すのです。
「馬鹿野郎。貞操観念、……」
 しかし、ヨシちゃんの表情には、あきらかに誰にも汚されていない処女のにおいがしていました。