2006/11/27 (月) 03:06:57 ◆ ▼ ◇ [qwerty]使い捨てられて声が出なくなり
失意に暮れながら荒川の河川敷を歩いている平野綾を見つけたのは
そろそろ本格的な冬の到来を予感させるような11月の末
つまり実に寒いある晴れた日の夕方の事だった
夕刊の配達を終え、缶ビールを飲みながら自転車を扱いでいた俺の
その眼前10メートル先に平野綾はいた
ふらふらとおぼつかない、しかしそれでいて不思議と重みのある足取りで
野球少年の声のする河川敷を歩いている彼女
“これは自殺するな”と直感にきた俺は彼女に声をかける
「自殺ですか?自殺はやめなさいよアナタ」
急に後ろから声をかけられ、驚いた様子で振り返る平野綾
「こんな寒い日はね、痩せてる女の子が歩いていちゃいけないんだ」
振り返った姿勢のままで平野綾は硬直していた
本当に驚いている様子だった
「腰にも悪いしね、股関節が硬くなるし、子供を生むときに悪影響が…」
続けて喋る俺を振り切るようにダッシュで逃げる平野綾
「おい!ちょっと!早まるなよ!」
“これは自殺で間違いないな”と思った俺は自転車を漕ぎ追いかける
平野綾は意外と速く走り、何よりも持久力があった
どうやら必死で走っている彼女を、ビール片手に追いかける
3キロも走っただろうか、平野綾は突然走るのをやめ
膝に手を付く格好で俯き、激しく肩を上下させながら呼吸の回復に努めだした
「別に走って逃げなくてもいいじゃん」と言う俺を苦しそうな表情で見やり
しかしまた地面に顔を向け激しく呼吸をする平野綾
「平野綾さんでしょ?俺は知っているよ」
話しかけると“シマッタ”という表情でまたこちらを見る
「別にファンってわけじゃないよ、セックスしたいかと言われればしたい程度さ」
俺のジョークに何の反応も示さず地面に座り込む平野綾
「ビール飲む?」
と言って手渡したビールを一気に飲み下し
勢いでゲロをはく平野綾