私は、ときどき、あの二人の老人を思い出すときがある。 たいていは、幸福な瞬間ではない。自分の才能に限界を感じた夜、 職場で宮仕えの陋劣さにうちのめされた夕、あるいは、 自分がこれから辿ろうとする人生の前途に、いわれない空虚さと 物悲しさを覚える日など、私はきまってあの二人の老人を憶いだすのだ。