2007/03/06 (火) 21:45:35        [qwerty]
 1927年11月17日午前4時ごろ、東京府下小松川下平井に住む小泉曾蔵(47)
から内縁の妻・鈴木きつ(40)が変死したとの届け出があったので、小松川署では警視
庁鑑識課員の出張を要請し、遺体の検視にあたった。頸部と両手首に緊縛したと思われる
傷痕があり、他殺の疑いが濃厚であった。そこで、曾蔵ら家人を厳しく取調べたところ、
驚くべき事実が判明した。変死したきつは、最近精神に異常をきたしていた。曾蔵ときつ
の姉・鈴木みよは、きつが気がふれたのはキツネが憑いたのだと信じ、本所中ノ郷の生玉
稲荷の巫女・水花こと鈴木よし(46)に、キツネ落としの祈祷を頼んだ。
 16日の夜、女行者・よしは信者の笠井笹真と内田克作を連れて曾蔵宅を訪れ、さっそ
くキツネ落としの秘宝にとりかかった。ところが、キツネの憑いたきつが逃げ出そうとす
るので、首と両手を縄で縛り上げ、キツネを追い出すのだと称して、きつの全身を激しく
もみつづけた。体の衰弱していたきつはこの荒行に耐えられず、心臓麻痺をおこして死亡
したのである。曾蔵ら家人はきつが静かになったので、これはキツネが落ちたせいだと喜
んでいたが、やがてきつの体がすっかり冷たくなっているのに気付き、驚いて届け出たと
いうのが事の顛末だった。次の日、女行者・鈴木よしら3名、曾蔵と鈴木みよの5人が、
傷害致死罪の容疑で検挙された。