2007/04/28 (土) 01:10:25 ◆ ▼ ◇ [qwerty]ああ、疲れたさ。
人間というのは考え込むと突然憂鬱になることがあるそうだが、今の俺もちょうどそんな感じで、
何か釈然としない気分となりながら、激動が続いた高校時代の思い出を頭に描いている。
何気なく外に出た俺は、ハルヒの支離滅裂な行動を苦虫を噛む様な顔で振り返りながら、
朝比奈さんの素晴らしいお姿をもっと堪能していればよかったと後悔の念を抱き、
木漏れ日が射す道を、高校時代、毎朝苦しめられたあの坂を上っていた。
平日の学校だというのにどことなく静かで、相変わらず安っぽいプレハブ校舎が風情を醸し出している。
桜舞い散る校門を、卒業式以来久しぶりに通る。
おもむろに懐かしくなってきた俺は、かつて騒然とした毎日を過ごした場所を1箇所1箇所巡ってみた。
教室に入ることはできないが、セキュリティの欠片もないこの学校を見回るのは造作もないことだった。
古泉に能力を聞かされた中庭のテーブル。文化祭でハルヒと長門が観客の度肝を抜いた体育館。
なんだ、ほとんど何も変わってないじゃないか。
自然と口元が緩む。何もかもが懐かしい。
様々な場所を歩き回った俺は、校門を出る前によく分からない気持ちに駆られ、あの扉の前に来ていた。
そう、現在はSOS団のプレートが外されて、正規の活動を行っているあの、
文芸部部室の扉の前に。
4月の上旬、今は授業中。
かつてのハルヒのように、授業をサボってまでクラブ活動に精を出すような奴はいないだろう。
部室に鍵がかかっているのは当たり前のことである。
しかし、憂鬱というよりは懐古の面持ちが強くなっていた俺は、かつての思い出の1ページをさらうように、
いるはずのない朝比奈さんの着替えを目撃しないために、軽く扉を2回叩いた。
当然、反応はない。
俺が1番に来るとは珍しいじゃないか、と自分に懐かしく言い聞かせ、ドアノブに手をかけた。
ガチャリ・・・
鍵はかかっていなかった。
まったく、部活動時間外にはしっかり施錠するのが部長の仕事だぜ。
ハルヒもその辺だけはしっかりしていたんだから、そこは見習っておくべきだな。他はともかく。
扉を明けると同時に、懐かしい言葉が浮かんできたのでつぶやいてみた。
世界を大いに盛り上げるための、
「涼宮ハルヒの団。」
つぶやきを言い切る前に、
扉の向こうから俺の高校生活をクソ面白いものに変えやがった声が聞こえた。
どこか色っぽいような顔で俺に微笑みかけたそいつはまさしく、
涼宮ハルヒだった。