2007/04/28 (土) 01:14:48 ◆ ▼ ◇ [qwerty]「あんたの意見なんか誰も聞いてない、じゃないのな。」
ここら辺は俺の記憶力を素直に褒めるべきだな。
普通は4年前の会話を一字一句覚えているなんて、ありえないことだろうが。
その後のハルヒの一言が、後ほどかなり大きな意味を持つことになってしまったからな。
前後の会話はなんとなく覚えていたよ。ここまで鮮明だとは思ってなかったが。
「え、あたしそんなこと言ったっけ?」
ハルヒが首を傾げながら俺の問いかけに答えた。
ひとつ考察してみると、過去の記憶を探るうえで、局地的な言葉の存在を忘れることは
誰にでも多々あることで、それほど珍しいものでもない。
だが、俺にはハルヒがなぜ、その言葉を忘れてしまったのかがなんとなく分かっていた。
出会い、SOS団を作り、多くの出来事を越え、歳月が経った俺たちの関係。
そこには見えない信頼関係が出来上がっているように思える。
今のハルヒは、俺の意見を無視することはあっても全否定することはなくなった。
初対面と3年の付き合いでは、そりゃ内面の意識も変わるだろう。それは信頼関係とみて間違いない。
でも、ひとつひっかかることがある。それがさっきそろえた「涼宮ハルヒ」という鍵だ。
信頼関係というなら、俺と古泉の間にもあるようにハルヒと朝比奈さんの間にもある。
つまり、部員全員が信頼関係で繋がっているはずだ。それが、SOS団だろう。
じゃあ、俺とハルヒとの間には信頼関係をある意味で越えている何かがあるのだろうか。
そうでないと、ここまで鍵をそろえた理由が説明できない。
そして、何よりも謎になるのはこのカードを財布に入れていた俺である。
今思えば、俺はなんでこのカードを財布に入れているんだろうか。
まずそこが矛盾点になる。
ハルヒの顔が不意にうつむいた。
そして、おもむろにこう呟く。
「あんたも回りくどい奴よね。言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」
強気に聞こえたその言葉は、どこか恥じらいの成分を含んでいた。
回りくどい、か。脳内の俺を説明するならこれほど端的な言葉もねーな。実に分かりやすい。
・・・
どうして、もっとはやく気づかなかったんだろうな。
回りくどく考える必要なんてこれっぽっちもないじゃないか。
俺は、ハルヒと2人になった閉鎖空間のときと同じように、手をハルヒの肩に乗せ、ぐっと引き寄せた。