2007/04/28 (土) 01:15:43 ◆ ▼ ◇ [qwerty]ういう間の悪い奴を俺は一人知っている。
そのT君はアホなので変な方向に勘違いしてくれて助かったが、この状況はそうともいかない。
ドアノブをまわす音から扉が開くまで幾分かの間があったので、ハルヒから体を離すには充分だった。
離れるハルヒの顔が、どこか名残惜しそうな、そんな雰囲気を醸し出している。
それにしても、誰だ。いきなり。
だいたい今は授業中だろ。文芸部は今でも実は地下で突拍子もない活動をしてるのか?
授業が終わるまでも、あと30分くらいは時間があるはずだ。
すると、
パァン!という小さな火薬音と共に、これまた見覚えのある顔の奴が出てきた。
今のはおそらくクラッカーだろう。
「おやおや、ちょっと入室するにはタイミングが早すぎましたかね?」
古泉だった。
すると、ガタリ、という音と共に掃除ロッカーから長門が出てきた。
こりゃまずい、古泉はともかく長門は顛末全部分かってるんじゃないだろうか・・・
古泉の後ろからは、なぜかメイド服を着ている、(大)と(小)の間くらいに成長した朝比奈さんが出てきた。
朝比奈さんの位置づけはとりあえず(中)ってことにしておこう。
「これはいいアダムとイヴですねぇ」
古泉がいつものニヤケ面を100倍増長させたような顔で皮肉を言うと、
「涼宮さんにもこんなところがあったんですねぇ!キョンくんを部室に呼び出すなんてぇ」」
「んなっ!ち、ちょっとみくるちゃん、違うって!これは、あの、その!偶然よ偶然!」
朝比奈さん(中)がほほえみながらハルヒをちょんっと小突いた。
意外な光景だった。
というか、朝比奈さんはわざわざ未来からやってきたのだろうか。
それにしても、ハルヒにちょっかい出すなんて、朝比奈さんは色々と成長していくんだな、と感心した。
体の方も順調に朝比奈さん(大)に向かって邁進しておられるご様子。
「・・・これはドッキリだったのか?」
そうつぶやくしかなかった。そりゃそうだろ。
「いえ、僕たちは特に打ち合わせなんてしていませんよ。」
と古泉が答えた。
じゃあなんだっていうんだ、その準備のいいクラッカーといい朝比奈さんの姿といい。
「よく分かりません。ただ、なんとなくです。クラッカーを用意させていただいたのも、
ただの僕の気まぐれです。なんとなく、皆さんと会える気がする。ただ、そう考えて北高を訪ねただけです」
少し動機は違うものの、古泉がここを訪れた理由はなんとなく俺と似ている。
懐かしい気持ちもあったが、少しだけこいつらに会える気がしていた。
よくもまぁ、とんでもないタイミングで出てきやがったがな。
でもこの理屈じゃ朝比奈さんとお前はともかく、長門の説明が付かないだろ。
掃除ロッカーに入ってるとか、こうなることを知ってないと無理だ。
「長門さんは何かが起こる気はしていたようですよ。もしかして、お二人を驚かせたかったのでは?」
そんなはずがあるかい。
と思いながらも、無表情とは少し違った、どこか笑いの成分をわずかに含んでいる顔つきをしている長門を見た。
長門はピクリとも動かずに、一言
「子供が丈夫に育つ事を願う」
・・・
こいつ、なかなか痛いツボを突いてきやがる・・・