2007/04/28 (土) 01:16:20        [qwerty]
ハルヒはまだ朝比奈さんとじゃれあってる。いい景色だ。 
それはいいとして、この恥ずかしい状況を少しでも逸らすために、この偶然性への疑問を問いかけた。 

「・・・古泉。ハルヒはたしかにお前ら全員を集めるつもりでいた。これは間違いない。 
ってことは、いつもの通りハルヒがそう望んだからお前らと、そして俺がここに来たという理屈も通る。 
だが、あいつはバレンタインデーの時のこともあったが、こういう恥ずかしい結末になるのを 
一番嫌がるような回りくどい奴だぞ(俺が言えることではないが)。 
だとしたら、この状況はなんなんだ?起こりえないことが起こっているんじゃないのか?」 

俺の長い長い問いかけに対し、古泉は意味をすぐに理解したのか、こう返してきた。 

「涼宮さんが完全な神ではないから、と説明することも可能でしょうが、私は違うと思いますね。」 

じゃあなんなんだよ。いい加減頭が混乱してきた。 

「簡単なことです。涼宮さんが望み、あなたが望み、僕が、そして朝比奈さん、長門さんが望んだから。 
これで説明がつきますよ。望む、の捉え方を少し変えて考えてみてください。」 

俺が望み、他のみんなが望んだこと。 

ああ、そういうことなのか。 



文芸部の部室。かつてここはSOS団の拠点であり、根城であり、我が家だった。 

団員は、すでに全員がこの北高を卒業している。 
SOS団は団長の「永久に不滅」の言葉どおり、解散はしていない。残り続けている。 

いつもの喫茶店がいつもの喫茶店であるように、この部室もまた、姿かたちは変わっても、SOS団の「家」だ。 

俺たちとって文芸部部室は、もう駅のホームのようにただ通り過ぎるだけの場所ではなくなっていた。 
みんなで過ごした日々を、決して忘れたくない。 

環境は変わっても、その思いがあるからこそ、この部室に来る意味がある。 

SOS団の創立記念日。この日だからこそ、みんな特別な思いを抱いているはずだ。 
ハルヒが現実にしたわけじゃない。それぞれ思っている思いが合致したからこそ、 
こうしてSOS団の面々はここにいる。もう一度、部室でみんなと一緒にいたい。それが「望み」なんだろう。 

この不思議な団結力が、信頼関係ってやつなのかな。 
それにしても、思わぬ展開になってしまったけど。 



「なぁーんだ!電話する手間がはぶけたじゃない!みんな来るなんて!」 

ハルヒは何事もなかったように、元気な声で団員を見回した。 
「ちょうどいいわ、こんな機会もうないでしょうしね。やーっぱSOS団の活動拠点はここじゃないと!」 

そういってハルヒは部室の隅にあった勉強机を自分のホームポジションに移動し、 
その机の上であぐらをかいて、「第何回か忘れちゃったけど、定例会議の開始よ開始!」と笑顔で言った。 

現在の時刻は3時50分。あと30分もすれば、正規の部員が部室に戻ってくるだろう。 
不法侵入で通報されないためにも、30分でここから立ち去らないといけない。 

メイド服の朝比奈さんは、どこからともなく水筒と湯飲みを取り出し、団員についで回った。 
長門は教室の隅でハードカバーの本を読んでいる。ページをめくる音以外たてずに。 
古泉はこちらを向いてニコニコしながらも、ときどきハルヒの意見に相槌を打っている。 

30分。わずかな時間であっても、SOS団の活動に支障はない。 
団長の名言「時間より中身」、ってな。 

この状況を作り出した巡りあわせ、というより団員の不思議な団結力。 
俺は心から誇りに思うよ。 

SOS団は、最高だってな。 

おわり