「おいおい女将さん! 何してんだよ! 十年間この日のために用意して待ちに待った 大晦日十時すぎの予約席じゃないか、ご案内だよ! ご案内!」 八百屋に肩をポンと叩かれ、気をとり直した女将は、 「ようこそさぁどうぞお前さん! 二番テーブルかけ三丁! 」 仏頂面を涙でぬらした主人、 「あいよっ! かけ三丁!」 期せずしてあがる歓声と拍手、店の外では、先ほどまでちらついていた雪を止み、 新雪に跳ね返った窓明かりが照らしだす「北海亭」と書かれた暖簾を、ほんの一足早く 吹く睦月の風が揺らしていた。 泣いた(*´ДT)