2005/05/28 (土) 05:23:49 ◆ ▼ ◇ [qwerty]ある旅館で殺人事件が起こった。
被害者は若い女性である。
彼女はトイレの中で死んでいたのだが、その手口は何とも残忍なもので、全身を小さな刃物のようなものでめった刺しにされるというものであった。
顔は原形を留めぬほどに無残に切り刻まれており、歴戦の捜査員たちですら、その現場のあまりの惨さには吐き気を覚えた。
しかし、捜査員たちは捜査を進めるうちに奇妙なことに気づく。
トイレは内側からしっかりとカギが閉められており、しかも窓は格子窓で数センチほどの隙間しかなく、とても人が入り込む余地などない。
つまり、トイレは完全な密室状態であったのだ。
変質者の犯行と単純に考えていた捜査員たちは、早くも捜査に行き詰まってしまった。
その数日後、捜査員たちの元に第二の被害者が出たという知らせがもたらされた。
今度の被害者は女性が死んでいた例の旅館の経営者の息子で、内側からカギの掛けられた自室の中で、またしても無残に切り刻まれて死んでいるのが発見されたのだ。
彼は何かのビデオを見ているときに殺されたようで、テレビもビデオもつけっ放しのまま放置されており、画面には最後までビデオを映し終えた後の砂嵐が映し出されていた。
またもや手掛かりが得られなかった捜査員たちは、とりあえずビデオを見てみることにした。
ビデオを巻き戻し、再生するとそこに映し出されたのはこの旅館のトイレの中。
どうやら、殺された息子には盗撮癖があったようだ。
やがて、そこに一人の女性が入ってくる。
あの殺された女性だ。
捜査員たちは色めき立つ。
彼はあの日も盗撮をしており、どうやってかは知らないが捜査員たちに見つからずにまんまとビデオを回収していたようなのだ。
ここには決定的瞬間が撮り納められているかもしれない。
捜査員たちは固唾を呑んで見守る。
すると、突然トイレの格子窓が開き、その隙間から手に大きな針のようなものを持った身長わずか数センチほどの老婆が入ってきた。
老婆は手にした針で用を足そうとしていた女性に襲いかかり、彼女をめった刺しにし始めた。
女性は悲鳴を上げて抵抗したが、老婆は恐ろしい敏捷さで動き回り、女性を襲う手を休めようとしない。
やがて女性はその場に崩れ落ちると動かなくなったが、それでも老婆は女性を突き刺し続けた。
女性はほとんどミンチのようになるまで切り刻まれて行く。
捜査員たちの間に沈黙が流れた。
目の前で繰り広げられている信じ難い惨劇に、皆言葉を失ってしまったのだ。
やがて、女性を切り刻み終えた老婆は画面、つまりビデオカメラがある方を振り返るとニヤリと笑い『次はあんたの番だよ』と言うと、窓の隙間から外へと去って行った。
捜査員たちのいる部屋の天井裏で、何かが動く気配がした。