一般の人はあまり意識していないようですが、日本国憲法が、個人を尊重するために国家権力に歯止 めをかける「立憲的意味の憲法」であることをとりわけよく示しているのが、九九条です。九九条には こうあります。 「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を 負ふ」 ご覧のとおり、憲法を尊重し擁護する義務を負う者のなかに「国民」は含まれていません。憲法を守 らなければいけないのは、国の象徴である天皇と、公務員、すなわち国家権力を行使できる強い立場に いる人間だということが、ここには明記されています。国民に憲法を守る義務が課せられていないこと から、この憲法が国民の自由を縛るものではなく、国家権力への歯止めであることは明らかです。