>  2007/07/08 (日) 18:45:40        [qwerty]
> 何か楽しい話をしてくださらない?

月末になるとゆうちゃんは薄い給料袋の封も切らずに
必ず横丁の角にある郵便局へ飛びこんでいくのだった
仲間はそんな彼を見てみんな 貯金が趣味のしみったれた奴だと
飲んだ勢いであざ笑ってもゆうちゃんはにこにこ笑うばかり

僕だけが知っているのだ 彼はここへくる前に立った一度だけ
たった一度だけ悲しい過ちを犯してしまったのだ
配達帰りの雨の夜 横断歩道の人影に
ブレーキが間に合わなかった彼はその日とても疲れてた

人殺し あんたを許さないと彼を罵った
被害者の奥さんの涙の足元で
彼はひたすら大声で泣きながら ただ頭を床にこすり付けるだけだった

それから彼は人が変わった 何もかも忘れて働いて働いて
償いきれるはずもないが せめてもと 毎月あの人に仕送りをしている

今日ゆうちゃんが僕の部屋に泣きながら走りこんできた
しゃくりあげながら彼は一通の手紙を抱きしめていた
それは事件から数えてようやく七年目にはじめて
あの奥さんからはじめて彼当てに届いた便り

ありがとう あなたの優しい気持ちはよく分かりました
だからどうぞ送金はやめてください あなたの文字を見るたびに
主人を思い出して辛いのです あなたの気持ちはわかるけど
どうかあなたご自身の人生を元に戻してあげて欲しい

手紙の中身はどうでもよかったそれよりも 償いきれるはずのないあの人から
返事が来たのがありがたくてありがたくて
ありがたくて ありがたくて ありがたくて
神様って思わず僕は叫んでいた 彼は許されたと思っていいのですか
来月も郵便局へ 通うはずの 優しい人を許してくれてありがとう
人間って悲しいね だってみんな優しい それが傷つけあってかばいあって
なんだかもらい泣きの涙が とまらなくて
とまらなくて とまらなくて とまらなくて


参考:2007/07/08(日)18時44分11秒