2007/09/01 (土) 07:58:00 ◆ ▼ ◇ [qwerty]綾波レイに思いを寄せる男性は日本中に百万人はいるだろう(春秋)
2007/09/01, 日本経済新聞 朝刊, 1ページ, , 546文字 書誌情報類似検索印刷イメージを表示
綾波レイに思いを寄せる男性は日本中に百万人はいるだろう。冷淡なほど無口で無表情な十四歳の謎の少女。
包帯姿で現れた現代の女神は日本アニメの申し子だ。その儚(はかな)げな存在感の内には、決然とした「迷い
のなさ」を秘めている。
▼ 九五年にテレビ放送された『新世紀エヴァンゲリオン』の新作映画が、きょう公
開される。その準主人公の絶大な人気は十年たった今も衰える気配がない。綾波を探しマニアの街、秋葉原を歩
いてみた。精巧な立体モデルの「フィギュア」は綾波だけは売り切れ。ネット競売では数十万円の値が付く希少
品もある。
▼ 現実社会では明るく元気な者の周りに人が集まりやすい。暗く思い詰めたような人柄に魅了さ
れるのは、なぜなのか。フィギュア製作の専門家に聞くと、綾波モデルを集めているのは三十代と四十代前半が
ほとんどだという。アニメやネットが築く仮想空間には、人の深層心理をえぐり出す魔力があるに違いない。
▼ 綾波レイが最初に「降臨」したとき、日本人はバブル崩壊で自信喪失のどん底にいた。傷だらけになって人
造の巨人に乗り込み、無言で毅然(きぜん)と敵と戦い続ける綾波への共感はその時代に根ざす。フィギュアと
は、無意識の信仰を形にした現代の偶像だろう。経済は立ち直っても、日本人の心には虚(うつ)ろが残ったのか。
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これ今朝の日経朝刊