2005/06/09 (木) 09:24:51        [qwerty]
梅雨時とは思えないいい天気だったりするので西新宿まで青空読書をしに行ったり
して、工学院大学前の広場でコーヒーを飲みながら野坂昭如「文壇」を読んでいた
のだが、隣に集まってきた4人の男女混合の学生が、いきなりアカペラでさわやか
な歌をおっぱじめた。うるせえなあと断ずるにはあまりにさわやかで、さりとて本
の内容とは全く調和せず、どうしたもんか殺したろうかと思案していたら、モノス
ゴイ突風が吹いて、オレの手元の文庫本は一瞬で分解し、本屋のカバー、中のカバ
ー、帯、の3点セットがひらひらとアカペラ男女の方へ舞って行った。男女は瞬時
に唱和を中断し、小鹿のごとき俊敏さでそれらを拾い集め、心臓を突き刺すような
無垢な笑みを浮かべオレに手渡してくれた。涙が止まらなかった。彼らの好意への
感謝と、それまで抱いていた漠然とした悪意の償いの意を込めて、地下のサンドラ
ッグで人数分のユンケルロイヤルを買い求め、アカペラ男女の代表格と思われるシ
ョートカットの女学生に、無言で差し出した。やや怯えたような笑顔を浮かべて受
け取る彼女に「じゃワタシ急いでますんで、今から業界の打ち合わせとか締め切り
とか色々ありましてホント申し訳ないんですけど」と早口で述べて、広場を後にし
た。遠目に振り返ると、行き交う車の隙間に、こちらを見て首をかしげる彼らの姿
が眩かった