2007/11/25 (日) 22:17:57 ◆ ▼ ◇ [qwerty]彼は、冷たい物を飲みたいとコンビニの中に入った。ウーロン茶を手に取りレジに
出した。高校生くらいの年齢だと思われる背の高い男の店員が、茶色い短髪をいじ
りながら、面倒臭そうに、柄の悪い声でいらっしゃいませと吐き捨てた。秀和には
それが気に入らなかった。百円ねー。その声に秀和はキレた。百円を財布から出し
て、店員の額に親指で押し付けた。店員はなんだかアワアワしている。余りのこと
にどう反応して良いのか解らないのだ。警官がこんな事をするとは、思いもしなか
ったのだ。スウェットのパンツとタンクトップ姿の無精髭の男が、腹を抱えて笑っ
ていた。店員は、やっと我に返り額から百円玉を取ってレジの中に入れた。そし
て、舌打ちをした。秀和は再びキレた。彼は店員の胸倉を掴み、レジの向こうから
引き摺り出した。店員は完全に秀和がヤバイのだと気付いたようで、すっかり萎縮
(いしゅく)していた。秀和は、テメエはー!テメエはー! と怒鳴った。客の女
が叫んだ。秀和は銃口を向けた。女は大股開きでギャーと叫び自動ドアに向かっ
た。すると、ドア・マットに足を取られて、彼女は、自動ドアに頭をぶつけて倒れ
た。ドアが割れた。割れたドアが空しく開いた。彼女は、ぶ厚いガラスのかけらの
中でグッタリとして、目を半開きにしている。秀和は拳銃をホルダーに収めた。店
内にいた数人の客は皆、バラバラと店を出た。秀和は店員のこめかみに銃口を向
け、ここ急所、と呟いた。店員はアニメみたいにガタガタと震えていて、こういう
状態の人間を見たのは初めてだと秀和は思った。が、以前、自分がそういう状態に
なったのを思い出した。高校生の頃、全員が髪を金髪に染めた3人組の不良に絡ま
れたときだ。秀和は、歯の根が合わない、という経験をその時初めてした。結局彼
は3枚の千円札と身の安全とを交換した。彼は、店員にシャッターを下ろせと命令
した。店員は、まるで抗(あらが)わずに、速やかに奥に入り(当然秀和もついて
いった)小箱のような蓋を開けて赤いスイッチを押した。外からジリジリ音が聞こ
え店内は暗くなった。シャッターが下りたのだ。次に、電気をつけろと命令した。
店員はそのようにした。秀和は、今まで自分になされてきた力の圧力を全て思い出
し目の前の従順な男にぶつけたく思った。が、それは、無意識の声であり、彼の意
識の声は、単に、態度の悪い店員を懲(こ)らしめてやろうというものだった。秀
和は、やはり相変わらずだった。けれど、どこか少しだけずれているのだが。こう
なる可能性は、ずっとあったのだ。