2005/06/19 (日) 09:13:34 ◆ ▼ ◇ [qwerty]これはこの世の事ならず。死出の山路のすそ野なる。賽の河原の物語。聞くにつけても哀れなり。
二つや三つや四つ五つ。十にも足らぬみどりごが。賽の河原に集まりて。父恋し母恋し。
恋し恋しと泣く声は。この世の声とは事かわり。悲しさ骨身をとおす也。
彼のみどりごの所作として。河原の石をとり集め。これにて回向の塔を組む。
一重組んでは父のため。二重組んでは母のため。三重組んでは古里の。
きょうだい我が身と回向して。昼はひとりで遊べども。
日も入相(いりあい)のその頃は。地獄の鬼が現れて。やれ汝らは何をする。
娑婆(しゃば)に残りし父母は。追善作善のつとめなく。
ただ明け暮れの嘆きには。むごや悲しや不憫(ふびん)やと。親のなげきは汝らが。
苦患(くげん)を受くる種となる。我を恨むることなかれと。くろがねの棒をのべ。積みたる塔を押しくずす。
そのとき能化(のうけ)の地蔵尊。ゆるぎ出でさせ給いつつ。
汝ら命みじかくて。冥途(めいど)の旅に来るなり。
娑婆と冥途はほど遠し。我を冥途の父母と。思うて明け暮れたのめよと。
幼きものを御衣(みころも)の。裳(もすそ)のうちにかき入れて。あわれみ給うぞ有難き。
未だ歩まぬみどりごを。錫杖(しゃくじょう)の柄に取りつかせ。
忍辱(にんにく)慈悲の御膚(みはだえ)に。抱きかかえて撫でさすり。あわれみ給うぞ有難き。