2008/04/15 (火) 20:13:56 ◆ ▼ ◇ [qwerty]中国戦略を急転換
ホンダの深謀遠慮
日本では、事の重大さがまるで伝わってないようだ。7月18日、ホンダは中
国合弁の広州本田汽車が2010年を目標にホンダのブランドを使わず、中国専
用に開発した広州本田の独自ブランド車を投入すると発表。同時に300億円を
投じ、本格的な高速テストコースを併設した広州本田の研究開発センターを設
立するとブチあげた。
この日の会見では、大きな発表が相次いだため、新聞各紙は広州本田の記
事を小さく扱うにとどまった。ところが、中国は違った。ホンダ会見の翌日、研究
開発センターの設立式を開催した。多くのマスコミが詰めかけたが、それもその
はず。来賓には、広州市の張市長。そして、国家発展改革委員会の陳建国氏
も名を連ねた。同氏が民間の式典へ出席するのは極めて異例だ。
陳氏は、1994年と2004年に発表された中国の自動車産業政策策定の中
心的人物。言ってみれば、外資を含め、自動車メーカーの戦略を左右する政策、
行政指導を行う業界のドンなのである。式典のスピーチでは、こう胸を張った。
「今回のホンダの決定をきっかけに、他の外資合弁各社も独自ブランドの開発
を重視し、その具体策について、真剣な検討をはじめるだろう」。この発言は中
国全土に報道されたが、そこには数年来続いた外資との綱引きの中国政府側
の勝利宣言、とのニュアンスがあった。
中国の政府や世論が不満なのは1級市場(先進国の技術水準)で戦える中
国メーカーが一社も育たないことだ。中国政府は90年代から中国に参入する
外資メーカーに、国有企業との合弁事業を強制した(外資の出資比率上限50
%)。その狙いは外資から国有企業への技術移転だ。しかし、国有企業は車両
開発から生産まで外資に前面依存したまま安住。一方、外資は技術移転を渋
った。
昨年3月、中国政府は具体的な外資への圧力に動いた。通達で外資合弁に、
中国専用の商標(ブランド)や自主開発車を義務付けることをにおわせたのだ。
もしこれが実現すると、外資は合弁企業を通じて本格的な車両開発を行わなけ
ればならず、技術移転が確実に加速する。結局、水面下の折衝で外資の反対
意見が通り、昨年末の通達細則で、この義務化は見送られることとなった。外資
が安堵の胸を撫で下ろしたのは想像に難くない。
それなのに、だ。ホンダは今回、それらを自らやると手をあげたのだ。しかし、
ホンダの合弁相手である広州汽車は、中国自動車メーカーの中では後発で、技
術移転を吸収できだけの器があるかはやや疑問なのだ。その点、トヨタやフォル
クスワーゲン、GM、フォード・マツダなどの合弁相手には、技術移転をしようとす
れば、スムーズに進むとみられる。他社により大きな圧力がかかるとみてよいだ
ろう。
ホンダは、政府に一旦“恩を売る”ことで、今後の中国戦略を優勢に進めたいと
の狙いもあるだろう。仮に将来、実力を付けた広州本田を切り離すような事態に
なったとしても、50%の出資に対するリターンを得られるというそろばん勘定が働
いたのかもしれない。ホンダの中国企業への技術移転ははたして、吉と出るか凶
と出るか。