2008/05/06 (火) 09:47:28        [qwerty]
「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」(2008年・日本) 監督:押井守 脚本:伊藤ちひろ

映画を観ていて、ときどき思う。「いくら好きでも映画の宣伝マンだけは出来ないな」
自分で気に入った映画はいい。でも、その逆ならきっと、僕は営業に出るフリをして映画館に入り浸っているだろう。
僕は映画についてはウソがつけない。本作はかなり早い段階で見せてもらった。
タイミングが早すぎて何も考える間もなく、だから何の期待もしていなかった。
期待感ゼロのときは「意外と面白かった」と思うことが多い。けれどこれは違った。言葉がなかった。
「衝撃的」なこともあった。これは関係者のための内覧会で、実は監督も立ち会っていた。
なのに、エンディングで拍手が起きなかった。
誰も手を打とうとしない。誰も声を出そうとしない。僕がプロデューサーなら卒倒しそうな場面だ。
「こんな完成披露があっていいのか?」と僕は凍った。
原作を読んでいないから、という理由で映画を理解できないのだとしたら、これは紛れもなく監督と脚本家の責任だ。
この作品は、原作の世界観を早い段階で折り込めなかったことが、最大の失策だと思う。
登場する子供たち(子供と断言できるほど幼くもない)が、実は永遠の命を持つ〈キルドレ〉という存在であることは
まったく教えてもらえない。そして平和を実感するためにショーとして戦争が行われていることも明かされていない。
この脚本は完全に崩壊している。
もしも僕がこの映画の宣伝マンだったらアタマを抱える。
後半の説明台詞を延々聞かされるまで、何を伝えたいのか全く分からないこの映画の、
どこを「スゴイんです」と売ればいいのか?そして監督に言いたい。
「もっと売りやすい映画にしてくださいよ」
そう言ったあとで僕は劇中の戦闘機のように翻り、メディアに対してはこう言うだろう。
「押井守の映像は、ハンパじゃありませんから」
僕は映画についてはウソがつけない。
ほかに言えることがあるとしたら、谷原章介のアテレコがバツグンに巧かった、ということくらいか。
もしも僕がこの映画に出資をした1人なら、オープニングの再編集を提案する。
「スター・ウォーズ」のようなオープニングロールの手法を使い、せめて〈キルドレ〉の説明だけでもあれば、
作品の理解力は随分と変わるだろう。はたして興行的に成功するのか否か。その行く末には大いに興味がある。