当初から批判の声が多かったロボトミーは、薬物療法の発達と人権意識の高まりに伴い、 1960年代後半から徐々に下火になっていく。しかし、一部の病院ではその後も手術は続き、 日本精神神経学会で「精神外科を否定する決議」が可決されてロボトミーがようやく完全に 過去のものとなったのは、1975年のことである。 そして、誰もがロボトミーを忘れ去った1979年、ある衝撃的な事件が起こっている。 都内某病院に勤務する精神科医の妻と母親が刺殺されたのである、やがて逮捕された犯人は、 1964年この医師にロボトミー手術を受けた患者である元スポーツライターだった。 彼は、手術ですら奪うことのできないほどの憎しみを15年間抱きつづけ、そしてついに その恨みを晴らしたのである。 ロボトミーが大きな話題になったのはおそらくこのときが最後。そしてロボトミーは 歴史の闇に消えていった。