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2001/12/24 (月) 23:05:37        [mirai]
おかあさん 雨の信号はいつも横断歩道のわきでぱっくり口をあけている
あなたの卵巣が真赤にはれ上がった太陽の記憶をゴミ箱から引きずり出し
そしてそこから一匹の虫がこそこそと逃げ出そうと28万5120時間の暗闇
をめぐりながら今すぐ夕餉の食卓にひんぱんに出された玉ネギのミソ汁を頭から
かぶりずぶ濡れになった幸福の思い出を今か今かと待ちわびる自閉症の子供の
通信欄に ぼくのおとうさんは公務員ですと一人で書き込む恥ずかしさを
誰かに教えたくて放課後も来るのも待ちきれず教室を飛び出して一目散に家を
めざしたのだけれども もれそうになるオシッコをがまんして教えられた通り
緑色に変わったら渡ろうとしていた信号が実は壊れていたんだと気づいていた
ときにはすでに終わっていたんです お元気ですか?

おかあさん 頭のいいのはぼくのせいではないと自己主張するたびに宙ぶらりん
の想像妊娠恐怖症からやっと立ち直った女の下着にはいつも黄色いシミがついていて
人種差別は性欲の根源であると公言してはばからないアメリカの政治家の演説を
うのみにしたようなすがすがしい朝の勃起で ベトナムのバナナのたたき売り
一目見ようと片手に自由の女神の電動コケシと片手に赤マムシドリンクを
かかえ込んだ農協のじじいがかわいい孫娘のおみあげにと上野のアメ横で
はやりのジーンズを買い込んで金を使いはたし 家族は運命共同体だと時代遅れ
の暴言を吐いて浮浪者になったあげく殺されてしまった 悲しい話を思い出しては
みるのです お元気ですか?

おかあさん パンツのはけない留置場は寒いです 水洗便所の流す音がうるさくて
なかなか寝つけないので犯罪者はいつもこっそりセンズリをかくのですが
「おかげであなたの夢ばかりみる」と取調べ室でしゃべったら 刑事がさも
うれしそうに「親孝行しなけりゃいかん」と昼メシにカツ丼をおごってくれたのですが
タヌキウドンの方が食べたくて「父オヤは嫌いだ!」と言ったら自衛隊かぶれの
となりのヤクザが真赤になっておこり出し「ゼイタクは敵だ」などと勝手なことを
ほざいたので「オマエなんか生まれてこなけりゃよかったんだ!この貧乏人め!」
とつい口をすべらしてしまったのです お元気ですか?

おかあさん いい加減あなたの顔は忘れてしまいました 膀胱炎にかかったときから
あそこを氷で冷やす快感をおぼえてしまったぼくはお風呂が大嫌いになり 何枚も何枚も
ボロボロに皮がはげ落ちてむき出しに皮下脂肪のしつこさが耐え切れず赤紫の玄関口
で一人で泣いていたんです
おかあさん もう一度アンパンが食いたい
おかあさん 正月に作ってくれた栗キントンが食いたい
おかあさん 豚肉だらけの砂糖のたっぷり入ったスキヤキが食いたい
おかあさん 好き嫌いは庶民の恥です
おかあさん 今朝から下痢が止まらないのです
おかあさん 血管もちぎれてしまったみたいです

おかあさん 血が止まらないのです
血が止まらないのです
おかあさん おかあさん
赤い色は大嫌いです!

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