2000/02/28 (月) 00:26:27      [mirai]
 レコ評のため椎名林檎の新作『勝訴ストリップ』(3月31日)を聴くが、これが
仰天モノの傑作。知ってる人もいると思うが、ぼくはもともとこの人をさほど高く
評価していない。それはこの人独特のあざとさや計算高さがハナにつくからだが、
音楽より先に歌詞やキャタクターばかりが語られがちな彼女をとりまく状況にいさ
さかうんざりしていることも関係している。もちろんそんなことは本人と直接関係
のないことかもしれないが、レコードを聴いてもそうした先入観を覆すだけのパワ
ーがあるとも思えなかったのである。
 ところが新作はすごい。相変わらずぼくはこの人の歌詞やキャラクターを語ろう
という気にはなれないが、なにより本作は音楽それ自体のテンションがすごい。オ
ルタナからインダストリアルまで包含したサウンドは混沌としているが、そのドン
詰まりの混沌の中に林檎の切羽詰まったヴォーカルが、重苦しい空気を鋭い爪先で
引き裂いていくようにすっくと立ち上がる。見事なサウンド・テクスチュアであ
り、鮮やかなプロデュース手腕だ。もしかして彼女以外のミュージカル・ディレク
ターのような人がいるのかもしれないが、そうだとしたところで、この人のヴォー
カリスト/パフォーマーとしての破格のスケールがなければ、ここまで緊張感あふ
れる磁場を作ることはできないだろう。いや、おみそれしました。浅井健一も1曲
ギターで参加している。