2000/03/07 (火) 15:30:32      [mirai]
ドラえもんは、全てを知っていた。そして、理解していた。
最後にドラえもんは、そっとのび太の顔に手を当てる。
『未来は、運命は自分の手で掴むものなんだ』と、その眼が語っている。
のび太とスネオをのせたタイムマシンが、現代に向けて飛び立つ。
二発の銃声が響き…。現代。
何事も無かったかのように日常がまた続いている。
ドラえもんは当然、現実の社会にはいない。
死んだ筈のジャイアンや出来杉も、普通の生活を送っている。
のび太は、奇跡的に命をとりとめ、
しかし、ドラえもんそのものの記憶をうしなっていた。だが、なんの不都合も無い。
もともとドラえもんなんていない世界なのだ。
病院で眼を覚ましたのび太の手には、金色の鈴が握られていた。
のび太は、その鈴がなんなのか、思い出す事はその後二度と無かった。
決して、思い出す事は。
時の旅人として一人、スネオは全てを知っている人間として残された。
なぜか、元の世界には別のスネオがいたためだ。
一人だけ記憶の残っているスネオに、「時」という偉大な力が干渉した為であろうか。
スネオはタイムマシンを降り、破壊する。そこは、昭和初期の日本。
そこでスネオは、モトオという友人と知り合う。スネオは当然全てを話しはしない。
ただ、ときどき面白おかしく元いた世界の話をするのみ。
二人はいつしか、その世界をマンガにし始めた。
忘れはしない、あの頃の友人達。
勇敢に戦い、勇敢に死んでいったジャイアン。
いつもやさしかったしずかちゃん。
いじめられてはいたけれど、たまに真の強さを発揮したのび太。
そして、不思議で悲しい運命を背負った猫型ロボット、ドラえもん。
忘れる筈はない。
彼のペンは、いきいきと昔の友人達をつづった事だった。
そして、時は経ち、二人は青年になり、漫画家になった。
そのペンネームは…。
           (ドラえもん最終回 完)