2000/03/08 (水) 03:38:31      [mirai]
その呪われたトンネルは大阪の「どんずるぼう」(漢字わすれた。)
                   と呼ばれる峠にあった。
                   暗闇の中に、ぐにゃぐにゃ曲がった坂道が永遠と続いていた。
                   対向車は一台も無かった。
                   ・・・不気味だ。
                   しかし車内はピクニック気分で明るかった。
                   三人は大声で歌を歌ったりしていた。

                  後数分でトンネルに着く距離になった。
                   サービス精神旺盛なMは、盛り上ようとトンネルに近ずくにつれて
                   「後1キロです。・・・後500メートルです。」と、距離を叫んだ。

                  「後100メートル。
                   ・・・後80メートル。
                   ・・・60メートル、50メートル、」
                   曲がりくねった道路の向こうにちらちらと、
                   暗く不気味なトンネルの入り口が見えて来た。
                   「・・40メートル、30メートル、後・・」
                   「ドォーン!」
                   「キャャャャャャャャー!」
                   悲 鳴!
                   車はトンネルの前で急停車。
                   なにかが、天井に落ちて来たのだ。
                   外に出る勇気は彼女等には無かった。
                   N子が泣き出た。
                   3人はトンネルに入るのを諦めた。
                   ・・・入れなかった。

                   峠を下る車。
                   向かう時とは打って変り、3人は一言も喋らなかった。
                   K子は、後ろの座席に座っていた。
                   K子は、ある事を感じていた。
                   重苦しい「邪悪な気配」。
                   車の外に広がる暗闇の中に、なにかがいるのだ。
                   トンネルの入口で感じた「邪悪な気配」が、ドア1枚隔てた外に・・・。
                   邪悪な塊が、逃げ帰る車の横にどこまでも付いてくる・・・。

                  恐い。

                  K子は、窓の外を見る事が出来なかった。
                   「はやく、どっかにいって・・・。」
                   K子は、震えながら念じるしかなかった。
                   突然、助手席に座るN子が泣き出した。

                  「・・・・外になにかいる。恐い。」
                   N子も「気配」を感じていたのだ。
                   「いい加減にせいよ。」
                   MがN子に向かって叫ぶと同時に・・・。
                   闇から。 
                   無数の子供の手が。
                   「パシ!パシ!パシ!パシ!」
                   窓ガラスを掌で。
                   闇から小さな子供の手、手、手、手・・・。
                   「ぎゃー!」
                   悲鳴!悲鳴!悲鳴!
                   車内はパニックに。

                  肘から上が無い無数の小さな手は、
                   窓ガラスを叩くと闇に消え、また別の手が現れては叩き消えていった。

                   何十もの小さな手が、窓ガラスを叩きつづけた。

                   頭を抱え泣き叫ぶK子とN子。
                   峠を下りきった時、子供の手は闇に消えた。

                   K子とN子は、ヒステリックに泣きつづけていた。
                   Mは2人が落ち着くまで、ファミリーレストランでコーヒーを飲む事にした。
                   3人は、其処で2時間ばかり過ごした。
                   人間は余りの恐怖の体験をすると記憶から消そうとするらしい。
                   K子は先程の恐怖の体験が、昔の出来事ように思えて来ていた。
                   「帰ろう。」
                   数時間前の出来事がまるで嘘のように3人は落ち着いていた。
                   Mの冗談に、K子もN子は笑っていた。
                   車に乗ろうとドアをあけたK子。
                   悲鳴!
                   ヘナヘナと、その場に倒れこんだ。  
                   ・・・・フロントとサイドガラスの到る所に
                   無数の小さな手の跡が。
                   掌の汗で付けられた無数の子供の手形が・・・。


                  そして、K子は、
                   窓の外を見るのが恐ろしくなり、窓と言う窓に中から新聞紙を貼った。
                   ・・・目が虚ろだった。
                 K子の精神は少しだけ破壊されていた。