2000/03/08 (水) 03:49:16      [mirai]
蒸し暑かった夏と民宿でのアルバイトが終わりに近ずいた時、一組のカップルが泊った。
             どう見ても高校生だった。(こ、殺してやろうかと思った。)
             午後4時ごろ、何時ものように巨大なお釜の中にある米をといていた。
             そこにパトカーのサイレン!
             浜辺の方にパトカーが走って行く。
             ・・・不幸の匂いが。
             ・・・・微 笑 み。
             ハイエナ野郎の私は、とにかく浜辺に向かった。
            あの高校生のカップルだった。
             怪訝な顔をしている警察達に、彼らは必死に何かを訴えていた。
             ・・・勘違い?
             どうやら あの高校生カップルの勘違が原因で、浜辺は大騒ぎになったらしい。
             その日の夜、布団をひくために高校生カップルの部屋に行った。
           警察に絞られたのか二人はかなり落ち込んでいた。
             (この後、○○○とか×××とかしやがるんかな~、クソー!)と
             怒りを隠しながら布団をひいていると、
             男の方が何か言いたそうに、私を見ている事に気付いた。
            ・・・・不幸の匂いが。
            ・・・・微笑み。
            少しだけ切欠を与えてやった。
            彼が体験した「あっちの世界ゾーン」とは・・・。
             彼らはやはり高校生だった。
            宿帳には、嘘の名前や住所を書いて泊っていた。
            浜辺では、警察達に、その事をごまかす為に苦労したらしい。
            ・・・しかし、警察を呼ばなくてはいけなかった。
            その時はそんな事を考えている余裕がなかったのだ。
             彼は水泳部員だ。
            泳ぎには自信があった。
            平泳ぎなら、数キロは難無く泳げるらしい。
            日差しが弱くなって来た午後の4時ごろ、
            砂浜で体を焼いている彼女を残して、彼は海に飛び込んだ。
            百メートルは、泳いだだろうか?
            浜辺の方を見ると、人々が小さく見えていた。
            「浜辺に戻ろう。」
            背泳ぎで、ゆっくりと岸に向かっていった。
            突然、嫌な気持ちが彼を襲った。
            「恐怖」
            得体の知れない「恐怖」。
            何故かわからないが、恐いのだ。
            右足が痙攣!
            彼が水泳部員ではなければ、パニックに陥り溺れていたかもしれない。
            彼は何とか立ち泳ぎに代え、右足を揉んだ。
            本来ならゆっくり右足を揉みほぐせば良いのだが、
            得体の知れない「恐怖」の為に、出来るだけ早く此所から去りたかった。
            ゆっくりと平泳ぎで岸に向かって泳ぎ始めた。
            得体の知れない「恐怖」が、段々大きくなって来た。
            早く岸に!
            回りには誰もいない。
            岸までかなりある。
            「恐い、恐い、恐い。」
            「恐怖」に絶えきれなくなって来た。
            そして、泳ぎながら足元を。
            「絶句!」
            黒く腐った土左衛門!
            海の底に、仰向けでブクブクに膨らんだ土左衛門!
            黒く膨らんで腐った男の顔が、彼を見ていた。
            パニック!!
            数メートル下で、腐った土左衛門が俺を見ている。
            「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
            必死に岸辺に向かって泳いだ。
            ・・・疲れた。
            無茶苦茶疲れた。
            クロールが出来ないくらいに疲れて来た。
            まだ、岸まではかなりある。
            だめだ・・・。
            平泳ぎに代えて泳ごうと下を見ると、あの土左衛門が!
            今度は、手を伸ばせば届くぐらい近くに!
            「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
            彼と一緒に、仰向けの状態で土左衛門は泳いで来たのか?
            そんな馬鹿な!
            彼は土左衛門を蹴った。
            「グニュ!」
            嫌な感触が・・・。
            パニック!
            叫びながら岸に!
            どうやって岸まで泳ぎついたのか、彼は覚えていなかった。
            浜辺にいた彼女は、
            彼が泣き叫びながら海から上がって来たので驚いた。
            「水死体だ!」
            彼のその言葉で、浜辺はパニックになった。
            警察が遣って来た。
            しかし、土左衛門は発見されなかった。
            彼は今でも足に、あの嫌な感触が残っていると言った。
            そして、私に彼らは「どうしたらいいのか?」と聞いて来た。
            私は「御払をしてもらうまで泳がない方がいい。」と答えた。
            帰るまでの3日間、彼らは砂浜にいるだけで海には入れなかった。
            その姿を見て、私は少しだけ「悪魔の微笑み」を・・・。
            そして心の中で呟いた。
            「楽しい夏の思い出ができてよかったね。は~と」と・・・・
         夏だ!海だ!土左衛門だぁぁぁぁぁぁぁぁ!